上場株式等の配当についての課税方法の見直し
2017.3.1
東証一部などの上場会社の株式を持っていて、配当金をもらったり、売買をされている方もいらっしゃると思います。
3月に入って、配当の課税方法に関して重要な情報が入ってきました。ここでは、内容をグッと絞ってお伝えしたいと思います(所得税については復興特別所得税がかかりますが、割愛します)。
(掲載当時の法令等に基づくものであり、ご覧いただいたときには取り扱いが異なっていることがありますのでご了承ください。申告や実行等の際は、必ず税理士又は税務署にご相談下さいますようお願い致します。)
配当金の課税方法
上場株式等の配当の課税については、次の3つの方法から選択ができます。
①総合課税
他の所得(給与や年金など)と合算して、所得税5%~45%、住民税10%の税率で
課税。配当控除が使えるのがポイント。
②申告分離課税
他の所得とは合算せず、20%(所得税15%、住民税5%)の一定税率で課税。上場
株式を売却して出た損失を控除できるのがポイント。
③申告不要
20%(所得税15%、住民税5%)の一定税率で源泉徴収されて完了。いろいろな面
で所得がないものとして取り扱われるのがポイント。
それぞれ、メリット・デメリットがあるのですが、これまでは所得税、住民税ともに同じ方法でなければいけないとされていました(基本的には自分に有利な方法を選択することになる)。
課税方法の見直し
平成28年分確定申告の真っ最中に、平成28年分から所得税と住民税で別々の方法を選択できるという取扱いがでてきました。
個人的に注目したのが、『所得税 総合課税/住民税 申告不要』という組み合わせです。
少し難しい話になりますが、例を挙げてみます。
<前提>
収入は配当金500万円(所得税75万円、住民税25万円が源泉徴収されるため手取りは
400万円)のみ。扶養親族等はなく、所得控除は基礎控除のみ。
<所得税> 総合課税
①配当所得 500万円
②課税所得 462万円
③②に対する税額 49.65万円
④配当控除 ▲50万円(配当所得500万円×10%)
⑤年税額 0円
この結果、源泉徴収された所得税75万円の全額が還付されます。
<住民税>申告不要
申告しないため源泉徴収された住民税25万円をそのまま負担
(還付も追加納税もなし)
これまでは、所得税で総合課税を選択した場合には、住民税も総合課税となるために約8万円の住民税を後日納付することになっていました。ただし、所得税が75万円還付されるため、実質的には約67万円の税金が戻ってくることにメリットがありました。
今後、別々の課税方法が選択できるとなると、上記の例のように、所得税のみが還付され、住民税についての追加負担がないことということもできるわけです。
社会保険料への影響
さらに大きいのが国民健康保険料(税)、介護保険料、後期高齢者医療保険料への影響です。
これらの保険料の計算方法は市町村によって異なるようですが、基礎になるのは住民税の所得です。申告不要を選択すれば、配当は住民税の所得に含まれないのですが、所得税の還付を受けるために配当について申告し、連動して住民税の所得にもなると保険料の負担が増えることになります。
そのため、これまでは税金の還付金額と国民健康保険料等の負担増とのバランスを考えて申告することも必要でした。今回の課税方法の見直しによって、今後、所得税については配当金の申告をすることで還付等のメリットを受けつつ、住民税については申告をしない(=申告不要を選択)することで国民健康保険料等の負担増を避けることができることになります。
もし平成28年分の所得税の確定申告を済ませてしまっていても、5月末位までなら所得税と住民税と異なる課税方法を選択することが間に合う可能性があります。
今回の内容が気になった方は、税理士やお住まいの市町村への早めのお問い合わせをお勧めします。
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